業務マニュアルを作成したものの「誰も読まない」「現場で使われない」「更新されない」・・・。
そんなことが起こらないような仕組みが、業務マニュアルには必要です。せっかく時間とコストをかけて作成しても、活用されなければ業務改善や教育効果につながりません。
業務マニュアルは、分からないことを調べる辞書のような資料ではありません。料理の作り方を学ぶレシピ本のように、仕事の進め方を学べるハウツー本に近い資料です。新人教育や業務の引き継ぎの中で活用されてこそ、企業の知的財産としての価値を発揮します。それらのノウハウが社員たちの血肉になることで業務品質は保たれ、それと引き換えに業務マニュアルは参照されなくなります。やがてルールが変更されたり、新人が配属されたりした時、再び社員の生育に活用される。業務マニュアルはそんな資料なのです。
その為に、業務マニュアルを教育や年間スケジュールと結び付け、継続的に活用・更新される仕組みを作ることが重要です。
本記事では、業務マニュアルが活用されない理由を整理し、新人教育への活用方法や現場に定着させる工夫について解説します。
業務マニュアルを整備しても、現場で十分に活用されていないケースがあります。
なぜ、そうなってしまうのでしょうか?
上記項目が1つでも当てはまると、その業務マニュアルは活用されなくなる可能性があります。
「どうせ見ても役に立たない」という認識が現場スタッフに広がるためです。その結果、口頭での引き継ぎや個人の経験に頼るようになってしまいます。
また、マニュアルの保管場所を知らないスタッフがいるのは論外です。最新版の業務マニュアルの格納場所を周知徹底するなど、必要なときにすぐ参照できる環境を整えることも重要です。
業務マニュアルを定着させるためには、「教育の中でマニュアルを使う」ことが重要です。業務マニュアルに書かれていることが、自社業務の正式な考え方と手順であることを、新人だけではなく、創業メンバーを含む社員全員に認識してもらわなければいけません。
教育の場面で繰り返し活用されることで、マニュアルは標準化された仕事の教科書として機能するようになるのです。その認知によって「わからなかったら業務マニュアルを確認する」は習慣化されていくでしょう。
個人の知識に基づいた口頭での教育や引き継ぎに依存した状態は、自社業務が属人化している証しでもあります。業務マニュアルは、担当者ごとの経験やノウハウを組織の知識として共有し、業務品質を維持するために整備されるものです。しかし、マニュアルが活用されず、「先輩に聞けばよい」という運用が定着すると、知識や判断基準は再び個人の中に蓄積されていきます。それは業務の標準化や属人化の解消という、業務マニュアル導入の本来の目的から外れており、コストの無駄遣いと言わざるを得ません。
業務マニュアルを自社で働くためのルールブックとして教育に活用することは、単に新人教育を効率化するだけではなく、企業として知識やノウハウを継承していくための重要なステップなのです。
前述の通り、教育の場での活用は、業務マニュアルを定着させるための、効果的な方法のひとつです。
それにより、標準化された仕事は“人”に浸透し、組織の共通認識になっていきます。その結果、業務マニュアルは企業のルールブックとして絶対的な認知を得るのです。
また、教育内容の標準化や指導品質の均一化にもつながるため、組織全体の業務品質の底上げという観点からも有効です。
ここでは、新人教育に業務マニュアルを活用する代表的な方法を紹介します。
新人教育では、実際の業務を通じて学ぶOJT(On the Job Training)が広く行われています。
OJTには指導内容が指導者の経験や考え方に左右されるという側面があります。同じ業務を教えていても、指導者によって説明内容や重点を置くポイントが異なるため、教育品質にばらつきが生じるのです。
そこで有効なのが、業務マニュアルとOJTを組み合わせる指導方法です。
上記は一例ですが、OJTに業務マニュアルを用いた短時間の座学を取り入れます。新人は全体の流れを知ってから詳細を学べるので理解しやすい流れで教わることができます。一方、指導者は業務マニュアルに沿って教える内容が明確になるので、教育負担が軽減されます。
このように業務マニュアルはOJTの代わりになるものではありません。OJTの効果を高め、教育内容を組織として共有するために業務マニュアルを活用することが大事なのです。
業務マニュアルは、一度読んだだけですべてを理解できるものではありません。
特に新人の場合は、業務経験が少ないため、入社直後にマニュアルを渡されても内容を十分に理解できないことがあります。そのため、教育の進捗に合わせて段階的に活用していくことが重要です。
例えば以下のように、社員の成長に合わせてマニュアルの活用方法を変えていく方法があります。
実際に業務を経験した後に読み返すことで、入社当時には理解できなかった内容が理解できるようになることも少なくありません。マニュアルを教育プロセスの中に組み込み、繰り返し参照する機会を設けることで、知識の定着を促進できます。
さらに、指導者が「この段階ではこの章を確認する」といった学習計画をあらかじめ設計しておくことで、教育内容の標準化にもつながります。
業務マニュアルはその内容が社員に浸透するほどに参照されなくなります。ノウハウが彼らの血肉として身につくからです。業務マニュアルの究極的な目的は、企業のノウハウを全社員で共有することです。教育内容が正しく習得されているならば、マニュアルが参照されなくなっても問題はありません。
しかし、人間は様々なことを忘れるようにできています。大まかには覚えていても細かなことから忘れ、徐々に独自の考えや手法が生まれてしまいます。その結果、品質劣化が起こることもあるかもしれません。最悪の場合、重大な損失が発生したり、不正が行われたりする可能性もないとは言えません。
そこで業務マニュアルから派生するツールを日常業務の中に組み込み、正しい業務を維持すると共に、そのバックボーンである業務マニュアルの存在を意識できる環境を整えてみてはいかがでしょうか。
ノウハウや手順が最も現場に浸透しやすい方策として、チェックリストの活用が挙げられます。
業務マニュアルに掲載されている重要な手順や確認事項をチェックリストとして整理することで、実務の中で活用しやすくなります。
例えば、
などをリスト化し、作業と合わせて確認できるようにします。
チェックリストは、作業漏れや確認漏れの防止につながるだけでなく、「マニュアルに基づいて業務を行う」という意識づけや習慣づくりにも役立ちます。
世の中には「説明した」「読んでもらった」という事実だけで新任者が習得できたと判断してしまう指導者が少なからずいます。しかし実際には、説明だけで理解し、実践できる人の方が圧倒的に少ないのです。また、新任者にしても自分が何を理解していないか知る術もありません。理解したつもりになっているだけで、業務の中で正しく実践できないことが多々あります。
そんな社内教育の現場に有効なのが、テストや確認フローを取り入れることです。
上記のような仕組みを設けることで、「読んだかどうか」ではなく、「理解し、実践できるかどうか」を確認できるようになります。
また、テストや確認フローは、新人教育だけではなく、業務変更時やルール改定時にも有効です。変更内容の理解度を確認することで、運用のばらつきを防ぎやすくなります。
業務マニュアルの内容が現場で正しく理解され、実践されているかを確認する仕組みを整えることで、組織のルールブックとしての認知が高まります。
現場で使われ続ける業務マニュアルと、次第に実践されなくなる業務マニュアルの違いは何でしょう?
それは見た目の良し悪しやページ数の多さではなく、「現場で役立つ内容になっているか」「継続的に更新されているか」という点にあります。
ここでは、活用される業務マニュアルに共通する特徴を紹介します。
活用される業務マニュアルは、現場の実態に即した内容になっています。
どれだけ丁寧に作られていても、実際の業務手順とかけ離れていたり、現場で使われている言葉と表現が異なっていたりすると、次第に参照されなくなってしまいます。管理職や経営者の希望的手順が書き込まれていたら、それは現場にとってはウソの手順でしかありません。
また、マニュアル作成者だけの視点でまとめられたマニュアルは、利用者にとって分かりにくいものになりがちです。マニュアル作成時には現場担当者へのヒアリングを行い、実際の業務内容を正確に反映させることを心がけましょう。
さらに、運用開始後も現場からの意見や改善要望を取り入れることで、より実践的なマニュアルへと育てていくことが重要です。
活用されるマニュアルのもう一つの特徴が、継続的に更新されていることです。
業務内容やルールは変化するものです。それに合わせてマニュアルが更新されなければ、実際の業務との間にズレが生じてしまいます。もしも、マニュアルを確認する度に情報が更新されていないことが続けば、現場はマニュアルを信用しなくなります。
「マニュアルは役に立たない」という認識が広がると、その後に活用を定着させることは簡単ではありません。
そのような事態を回避するためにも、
といった運用ルールを整備しておくことが重要です。
業務マニュアルは、作成した瞬間に完成するものではありません。現場の変化に合わせて更新され続けることで、初めて組織の知的財産として機能し続けるのです。
年に1回程度、業務改善のチェックを年間スケジュールに組み込み、その資料のひとつとして業務マニュアルを活用し、チェック・更新する流れがあると理想的な継続性を維持し続けるでしょう。