業務マニュアル作成に役立つツール・ソフト比較
「どのツールを使うか」
それは業務マニュアルの整備を企画する際に検討するべき課題です。WordやPowerPointなど多くの会社でおなじみのドキュメントソフトや、運用にも便利なナレッジ共有ツール、あるいは専用のマニュアル作成ツールなど、選択肢は多岐にわたります。
ツールは「更新されない」「検索しにくい」「現場で使われない」といった問題につながる重要な要素なので、慎重に検討したいところです。その為にも自社スタッフの技能、マニュアルを使用する場所、自社備品や設備など、様々な要素についてあらかじめ把握しておく必要があります。機能の多さや流行に流されず、自社の業務や運用に適したツールを選択しましょう。
本記事では、業務マニュアル作成に使われる代表的なツールとその特徴を整理したうえで、選定時のポイントやよくある失敗例について解説します。
マニュアル作成ツールの種類
業務マニュアルの作成・運用に使われるツールは、大きくいくつかのタイプに分けることができます。
それぞれに異なる特徴があるので、「どのような運用に適しているか」をよく理解した上で選定すると良いでしょう。
ここでは、代表的な3つのタイプを紹介します。
ドキュメント系
最も一般的な制作用ツールが、WordやPowerPointなどのドキュメントソフトです。
これらのツールは多くの企業で既に導入されているので、特別な準備や投資をせずともすぐに制作を始められる点が大きなメリットです。また、印刷やPDF化にも適しており、配布がしやすい点も特徴です。
一方で、ファイルが分散しやすく、更新や共有が煩雑になりがちです。そのため、複数人での編集や最新版の管理には、厳格なファイル管理ルールを定めて徹底する必要があります。
こだわりのあるデザインレイアウトで業務マニュアルを制作したい場合、Adobe IndesignやAdobe Illustratorというアプリケーションが最適です。アプリの使用にはサブスクリプション契約が必要ですが、Microsoft系のアプリよりも細やかなスタイル設定や描画が可能です。また、印刷やPDF化にも適しており、印刷物の制作会社などでは優先的に使用されています。
ナレッジ共有ツール
近年多くの企業で活用が進んでいるのが、社内の情報共有を目的としたナレッジ共有ツールです。
ナレッジ共有ツールは、社内のノウハウや手順、ルールなどの情報をWeb上で蓄積・共有できるツールです。作業的には「社内版のWikipedia」を制作するイメージに近いでしょう。
代表的なナレッジ共有ツールとして、Notion や Confluence、esa などが挙げられます。
ナレッジ共有ツールはマニュアルに限らず、様々な情報を社内で共有することを目的にした、自由度の高いWeb上のシステムです。一般的にWeb上で情報を一元管理でき、検索性が高く、複数人での更新や閲覧にも適しています。また、情報の蓄積や再利用がしやすい点も特徴です。
一定レベルのITリテラシーが求められるので、どの職場でも受け入れられるとは限りません。高齢者が多い職場では毛嫌いされる可能性もあります。
インターネットにつながればどこからでも情報にアクセスできますが、逆説的にはネットにつながらない場所ではマニュアルを確認できないという弱点があります。
また、複雑なレイアウトが必要な紙マニュアルには向いていません。
専用マニュアルツール
インターネット経由で使用するソフトウェア(SaaS)には、マニュアル作成に特化した専用ツールも存在します。
これらは、業務手順の記録や可視化、教育用途での活用などを目的に設計されたツールで、一般的なドキュメントツールよりも「マニュアル作成」に特化した機能を備えているのが特徴です。
代表的なマニュアル専用SaaSに、Teachme Biz や Dojo、Scribe などがあります。
これらはサブスクリプション型のサービスとして提供されており、ブラウザ上でマニュアルを作成・共有できます。AIによる文章作成機能や、操作画面を自動で記録して手順書を生成する機能など、サービスによっては様々な機能が用意されており、作成工数を大幅に削減できる場合もあります。
マニュアル制作と共有に特化したシステムなので、操作性が明快で、ITリテラシーによらず現場に受け入れられやすいと思われます。
複数のプランが用意されているツールが多く、機能制限やコストをしっかりと調べた上で、自社に最適なサービスを見極めてください。
ナレッジ共有ツール同様、閲覧にはインターネットが必要です。
コストを検討する
Microsoft Wordなどは導入済みの企業が多く、ナレッジ共有ツールもすでに導入している企業があるでしょう。その場合、追加でコストをかける必要はないという考え方があります。今あるツールで、業務マニュアルは十分制作、運用できるはずです。
新たなツールを導入する場合、サービスによって導入費用や年間利用料金が必要です。それぞれ、いくつかのプランが用意されていることも多く、自社に必要な機能と年間予算に見合う、ツールとプランを選びぬいてください。
コストと機能
まず、Adobe系アプリケーションはサブスクリプション契約となります。PDFで閲覧することを前提にすれば、編集に必要なPC台数分を契約すれば運用可能です。
ナレッジ共有ツールもサブスクリプション契約です。編集者と閲覧者の合計人数によって費用が変わります。3カ月程度のお試し期間が用意されていることもありますが、業務マニュアルの運用を試すには物足りないでしょう。業務マニュアルの運用を主としてナレッジ共有ツールを選ぶと、コスト的に釣り合わないかもしれません。様々な情報を社内で共有することを主として導入を検討するべきツールと言えるでしょう。
SaaSのマニュアル専用ツールの多くもサブスクリプション契約ですが、一部無料プランを用意しているツールもあります。ただし、機能や使用人数、容量などあらゆる面で制限があるので、よく調べた上で候補を絞るとよいでしょう。小規模な運用や、更新頻度が低いマニュアルであれば、無料プランのツールでも対応できる場合もあるでしょう。導入コスト0円は大きな魅力ですので、運用の可能性をしっかりと検討するべきでしょう。ただし、無料版提供が終了するリスクは意識しておく必要があります。
導入のしやすさ
導入のしやすさという観点では、既存ツールや無料ツールに分があります。
すでに社内で使われているツールであれば、新たな教育や環境構築が不要なため、スムーズに運用を開始できます。特に、マニュアル整備の初期段階では、この手軽さは大きなメリットです。
一方で、有料ツールは導入時に設定やルール設計が必要になる場合があり、運用が軌道に乗るまでに一定の時間がかかることがあります。
ただし、その分、運用が定着すれば、更新や共有が効率化され、長期的にはメリットが大きくなるケースも少なくありません。
ツール選定のポイント
業務マニュアルのツールを選ぶ際に重要なのは、機能の多さや価格だけで判断しないことです。
どれだけ高機能なツールであっても、自社の業務や運用に合っていなければ、現場で使われず、結果として形骸化してしまいます。
ツールはあくまで「マニュアルを運用するための手段」です。重要なのは、継続的に使われる仕組みをつくれるかどうかです。
ここでは、ツール選定時に押さえておきたいポイントを紹介します。
更新のしやすさ
業務マニュアルは業務の変化に合わせて更新され続けるものです。そのため、更新のしやすさは最も重要なポイントの1つです。
特に更新頻度の多い業務の場合、誰にでも更新しやすいツールであることが、スムーズな更新を維持し続けるために重要な要件です。
例えば、以下のような事を、事前に確認しておくと参考になるでしょう。
- 修正が簡単にできるか
- 複数人で更新できるか
- 変更履歴を管理できるか
更新のしやすさは、マニュアルを「生きた情報」として維持できるかどうかを左右する重要な要素なのです。
検索性・共有性
必要な情報に素早くアクセスできるかどうかも、ツール選定において重要なポイントです。
どれだけ内容が充実していても、必要な情報にたどり着けなければ意味がありません。そのため、以下のような機能面を確認することが重要です。
- キーワード検索ができるか
- タグ付けやカテゴリ分けができるか
- 社内でスムーズに共有できるか(URL共有・閲覧制御など)
情報量が多くなるほど検索性の重要性は高まります。日常業務の中で「すぐに使えるかどうか」を意識することが大切です。
ただし、検索性はツールの機能だけでなく、記載する情報の整理方法でも大きく左右されるので、編集にはツールを使いこなすITリテラシーと共に事前の構成設計のルールが必要です(「失敗しない業務マニュアルの構成設計とは?」参照)。
権限管理
業務マニュアルの運用において、閲覧だけができる人と編集もできる人を権限によって明確に分ける必要があります。
そのため、
- 閲覧権限を設定できるか
- 編集権限を制御できるか
- 誤編集や情報漏えいを防げるか
といった点も確認しておく必要があります。
複数人で運用する場合や、情報の重要度が高い場合には、公開権限を持つ最終承認者も設定できるようなツールが望ましいでしょう。
ナレッジ共有ツールやSaaSを利用しないケースでも、ファイルのセキュリティ設定や共有フォルダのアクセス設定により、疑似的に権限を分類することが可能です。
ツール導入の失敗例
業務マニュアルのツールは、適切に選定・運用されれば大きな効果を発揮しますが、選定を誤ると、かえって現場の負担を増やしてしまうこともあります。
ここでは、よくある失敗例をもとに、注意すべきポイントを見ていきます。
使われなくなる理由
ツール選択において最も避けたい失敗は「現場で使われなくなる」ことです。
その原因には以下のようなことが考えられます。
- 操作が難しいと感じる社員が多い
- 検索機能が不十分で情報が探しにくい
- 更新に手間がかかる
コストをかけて高機能なツールを導入しても、現場で使われなければ意味がありません。ツール自体の機能もさることながら、現場のITリテラシーを見極めた上でツールを選択しましょう。
また、運用ルールや更新体制が整っていないケースも問題です。新ツール導入に際しては、勉強会やヘルプ要員の任命など、ツールの早期浸透を意図した施策を行いましょう。
現場に合わないケース
自社の業務や運用に合っていないツールを選んでしまう失敗例もあります。
- 現場は紙中心なのに、Webツールを導入した
- シンプルな機能しか使わないのに、高機能で維持費が高い
- Web環境の悪い現場があるのに、ローカルで見る手段がない
ツール選択のタイミングで導入後の運用を十分に検証することでこれらのミスマッチを避けることができます。ツール選択は時間をかけて慎重に検討しましょう。
まとめ|ツール選びは「機能」ではなく「運用」で決める
業務マニュアル制作に使うツールは多種多様ですが、重要なのは「どのツールが優れているか」ではなく、「自社の業務や運用に適しているかどうか」です。
- ツールにはそれぞれ特徴と向き・不向きがある
- 無料プランは制限を事前に理解してから検討対象に加える
- 更新しやすさや検索性、権限管理が重要
以上のようなポイントを踏まえて検討しましょう。
また、ツール導入で失敗しないために、以下のことを意識する必要があります。
- 現場で使いやすいこと
- 継続的に更新できること
- 業務や組織にフィットしていること
ツールはあくまで手段であり、適切な構成設計や運用ルールと組み合わせてはじめて効果を発揮します。
分かりやすくて使いやすい業務マニュアルを制作するためには、構成設計や書き方が重要です。以下の記事では、それぞれのポイントを詳しく解説しています。
また、業務マニュアルは運用の仕組みも含めて計画することが重要です。業務マニュアルの「運用と更新」の仕組みづくりについては次の記事をご覧ください。
あいわーくすでは業務マニュアルの制作代行を承っております。
使いやすくて分かりやすい業務マニュアルを、その後の運用方法や更新作業を考慮して、企画制作いたします。

