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チラシまたはフライヤーさらにリーフレットおまけにビラ

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チラシまたはフライヤーさらにリーフレットおまけにビラ

チラシ、フライヤー、リーフレット、ビラ




上の写真の制作物(A4サイズ/両面フルカラー印刷)は、チラシ、フライヤー、リーフレット、ビラの4つの内どれでしょう?

1枚の紙で完結する印刷物を印刷業界ではペラ物と呼びます。チラシ、フライヤー、リーフレット、ビラは、ペラ物の中でも特に小型の広告印刷物を指す名称として知られています。
それら4つについて「何が違うのか?」を説明するページがネット上にはたくさんあります。色々なページを読み比べましたが、互いに微妙に異なっていたり、現実と比べてしっくりこなかったり。

で、冒頭の問題ですが、写真の制作物はどれだと思います?
正解は・・・


資料からアプローチしてみる




それらの言葉について、周囲の動向に惑わされず冷静に向き合ってみます。
まずは辞書を開いてみました。

広辞苑(岩波書店)
ちらし
広告のためにくばる刷物。ビラ。引札。「大売出しの―」
フライヤー
チラシ、ビラ。
リーフレット
広告・案内・解説・宣伝などに使用する、1枚あるいは折りたたみ式の小型の印刷物。ちらし。
ビラ
宣伝広告のため、人目につく所に貼りだしたり通行人に配ったりする紙片。ちらし。
明鏡国語辞典(大修館書店)
ちらし
広告・宣伝文を印刷した紙。多くは一枚刷りで、新聞に折り込んだり街頭で配ったりする。
フライヤー
ちらし。ビラ。
リーフレット
宣伝・広告・案内用などの、一枚刷りの印刷物。折り畳んで冊子にしたものもある。
ビラ
広告・宣伝のために文字や絵をかいてはり出したり、人に配ったりする紙片。「―をまく」

4つの呼び方のどれもが同じものを指している印象が残ります。強いて言えば、リーフレットには折り加工したものを含んでいることを特に強調しているようです。

外来語であるフライヤー(flyer/flier)とリーフレット(leaflet)については、英和辞典でも調べてみました。

ジーニアス英和辞典(大修館書店)
flyer/flier
《米略式》ちらし、ビラ
leaflet
(広告の)ちらし、リーフレット;小冊子
ウィズダム英和辞典(三省堂)
flyer/flier
宣伝ビラ、フライヤー、ちらし、折込広告;広告用小冊子
leaflet
小冊子、ビラ、リーフレット(無料配布のものが多い)

かなり広義として和訳されているようです。小冊子まで含まれていると、翻訳家の想像力が試されそうですね。flyer/flierの語源は飛行機やヘリコプターからチラシを撒いたことに由来するそうです。一方、葉っぱを意味する「leaf」に、「小さい」を意味する接尾語「-let」でleafletとなり、1枚物のチラシを意味するようになったそうです。


興味深い記述が日本大百科全書(ニッポニカ)にあります。掲載されているのは4つの呼称の中ではチラシだけでした。

日本大百科全書(小学館)より、一部抜粋
ちらし
一枚ものの小型印刷広告。引札(ひきふだ)、びらともいう。英語のbillは公文書についている印章を意味する中世ラテン語のbullaに由来し、広告を意味するようになったのは1470年代という。世界に知られる手書きの最初のびらはイギリスのカクストンの『サルズバリーのパイ』(1477)という宗教書の広告であると伝えられている。日本では宝永(1704~11)ごろに始まって文化・文政(1804~30)期から盛んに出回り、江戸では引札、大阪ではちらしで通っていた。(以下、略)

文化の中心地江戸で使われていた「引札」がすたれ、大阪で使われていた「ちらし」が今日まで、しかも全国で使われ続けているのは意外な記述です。びらとbillの語感が似ているのも興味深いですが、それらを結びつける資料は発見できませんでした(語源に関する諸説のひとつではあるようです)。

印刷屋さんの実態

体験的な事でいえば、これら4つについて仕様を分類して売り分けている印刷屋さんと、今まで一度も出会ったことがありません。

「実際、これらについて仕様を区別して売り分けている印刷屋さんなんているのだろうか?」
興味がわいたので調べてみました。

5つのキーワードで検索し、広告表示を除いて上から順番に合計50社のホームページを調査しました。キーワードは「チラシ印刷」「フライヤー印刷」「リーフレット印刷」「ビラ印刷」そして「折りパンフレット印刷」の5つで、それぞれの検索結果から重複するサイトを除いて各10社をピックアップして、合計50社としています。
いきなり出てきた「折りパンフレット」ですが、辞書でリーフレットの説明に出てきたような「1枚の紙を折り畳んだ印刷物」を、私ども(特に私?)は「折りパンフレット(折りパンフ)」と呼んできたので、これを足してキリのいい50社にしました。

以下のデータは2022年6月末日調査のものです。あらかじめご了承ください。



50社のうち、チラシ印刷に関するページを用意しているのは49社(98%)でした。上のグラフは該当するページのタイトルを分析したものです。チラシ単体でページを用意しているは6社だけで、実に42社がフライヤーを同列(仕様、オプション、価格が同じ)として表示しています。全体の84%の会社がチラシとフライヤーを売り分けていないということです。



チラシとは別にフライヤーのページがあるのは6社だけで、その内タイトルで「フライヤー・リーフレット」とくくっているサイトが1社、「ビラ・フライヤー」とくくっているサイトが1社でした。
また、リーフレット単体のページがあるのは9社でした。
フライヤーとリーフレット、どちらも8割以上の会社が売り分けてはいないということを示します。
ビラは単独でページがあるのは1社だけで、「選挙ビラ」というニッチなタイトルでした。ビラは消えゆく傾向にある言葉なのかもしれません。



1枚の紙を折り畳んだ印刷物を「折りパンフレット」としてページを用意しているサイトは、42社(84%)に上りました。

以上のことから、小型印刷物制作を依頼したい皆さまが印刷業者を探す時には、折りがなければ「チラシ」、折りがあれば「折りパンフレット」で検索すればたくさんの業者がヒットします。

WebサイトのSEO対策上、印刷会社としては様々な呼び名をタイトルに入れておきたいのでしょう。その為か、ページの内容は同じなのに「リーフレット」と「折りパンフレット」とタイトルを変えただけの2ページを用意しているサイトもありました。

ネットでよく見る説明

冒頭にも書きましたが、チラシ(ビラ)、フライヤー、リーフレットの違いについて説明しているサイトが散見されます。相互で微妙にニュアンスの違いがあったりするのですが、共通している記述もあります。
参考までに紹介しますと、チラシ(ビラ)は薄い紙を使い、フライヤーは凝ったデザインで厚めの紙を使ったもので、リーフレットは折り加工を施したより詳しい内容を記したもの、ということが概ね共通しています。
ただそう書いてあるサイトでも、フライヤーがチラシと同じ扱いのところは多いし、リーフレットのページはないのに折りパンフレットのページがあるなど、総合的な矛盾を抱え込んでいる印象もあります。「使う人が自由に呼び分けてください」と身もフタもない結論で終わっているサイトもありました。

身もフタもないですが、私もそう思います!(笑)
お客さまがご自由に呼び分けてください。

制作する側はご要望に応じて全力でデザインしますし、紙の厚さや折り加工はオプションでお客さまに選んでいただけるように準備しています。それぞれの印刷物にどういう役割を持たせて、どういう仕様にするかは、クライアントが自由に決められます。

自由に呼んでいいという認識をふまえて改めてネットでよく見る説明を読むと、「プロモーション計画における広告印刷物の呼び分け」という風に読み解くこともできます。以下は、複数のサイトでの説明にみる共通点を元に、プロモーションの観点から再構築したフィクションです。



プロモーションの第一段階としてチラシ(ビラ)を撒きます。告知活動として、大量に撒く必要があります。予算が限られているので、枚数重視で紙を薄くして印刷します。

第二段階としてフライヤーを設置します。アプローチツールとしてユーザーの興味を促進させるため、ブランディングを強調したデザインで制作するとともに、特定の場所に設置する枚数だけを刷ればいいので、イメージ重視でやや厚い紙を使用して制作します。

第三段階としてリーフレットを設置します。疑似体験や比較を促すツールとして、1枚の紙を折ってページを設け、商品やサービスのロジカルな説明でユーザーを説得します。こちらも特定の場所に設置する枚数だけ刷りますが、折り加工がある分、薄い紙を使用してコストを抑えます。

プロモーション計画関係者は3種類のツールを上記のように呼び分けることにより、在庫管理や意思疎通が容易になります。

上記のように、多種多様な販促ツールを管理するために、ユーザーが自由に呼び分けると便利ではありますね。

この時、どのツールをどう呼んでも、全く間違いではありません。結局のところ、これまで見てきた通り、チラシ、フライヤー、リーフレット、ビラは、「小型のペラ物広告」という同義の言葉だからです。

なぜ、こんなに呼び方が多いのか?

論争があるわけではないですが、様々な誤解や現実との乖離を生み出している観もある、「小型のペラ物広告」をめぐる様々な呼称。それらがそれぞれどう違うのかを考える事は、個人的には「“机”と“デスク”はどう違うの?」と首をひねっているような滑稽さを禁じえません。

チラシとビラは日本語であり、歴史の中で定着した言葉と廃れゆく言葉でしかありません。

フライヤーとリーフレットは英語であり、飛行機からの配布が可能になった時代以降の新しい言葉か、それ以前からある言葉かの違いでしかありません。

それぞれの言葉は同じものを指し、本来は定義づけする必要のないものだと思います。

海外からのイベンターやディレクターが来日すると、プロモーション活動上の指示の中でリーフレットやフライヤーという言葉を使います。チラシやビラなんて日本語を彼らは知らないですから。日本は日本語というほかに類似のない独特な言語を使う国なのに、カタカナという表音文字があるので外来語を受け入れやすい柔軟な文化を持っています。あっという間にリーフレットやフライヤーという言葉は国内に広まり、制作会社も印刷会社もそれに対応したプロモーションを展開する必要に迫られました。

・・・というストーリーは個人的な想像ですが、トッピな妄想ではないと確信いたします。

言葉は変わっていくし、消えていくものもあります。一方で、グローバル化によって異なる言語に由来する外来語が増える可能性が常にあります。「スパッツ」が「レギンス」に変わったように、制作、印刷業界の言葉もどんどんと変化していき、その過程で複数の言葉が共存する時期が必ずあります。江戸時代の「引札」と「ちらし」のように。




呼び方より中身が大事




上の画像はGoogle Trendsを利用して、チラシ、フライヤー、リーフレット、ビラの4つのキーワードの人気(検索に使用された回数)を比較した画面写真です(2022年6月調べ/過去12か月間)。Google Trendsは実数ではなく相対的な数値で比較表示しますが、ご覧の通り青い線だけが悠々と飛翔している観があります。青い線は「チラシ」を指し、赤の「フライヤー」、黄の「リーフレット」、緑の「ビラ」は軸線にへばりついていてほぼ見えません。
4つ言葉の中で、圧倒的多数の人が「チラシ」という言葉を用いている証だと考えます。日常的に、またビジネスの場面でも、フライヤー、リーフレット、ビラという言葉を使うよりも、「チラシ」という言葉を使った方が意思の疎通はスムーズでしょう。かくいう当社も「チラシ」と呼んでいます。

さて、冒頭の問題に戻りましょう。
もうお分かりのとおり、皆さまはお好きな呼び方をしていただければ、どれでも正解です。
それぞれ決まった仕様も作法もありません。ご依頼の際は呼び方にこだわるよりも、どういった目的でそれを作るのかをできるだけ詳しく教えてください。あいわーくすは目的を考慮した仕様とデザインによる最適な印刷ツールを提案し、貴社のプロモーション活動を強力にサポートいたします。

あいわーくすのペラ物制作について

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