印刷業界での常用語

印刷業界には専門用語が多く、新任の担当者さまは戸惑うことが多いと思います。
このページでは標準的な制作の流れの中で、お客さまとのやり取りで使用される機会の多い用語にしぼり、ご説明いたします。
青文字の見出しがお客さまの作業、赤文字の見出しが制作会社の作業です。
1 原稿作成
ここでいう原稿とは、お客さまにご用意いただく「文字原稿」と「写真・図表」を指します。文章については見出しと本文をフォントで差別化したWordファイルで、表やグラフについては数式セルを値のみで上書きしたExcelファイルで、それぞれ支給いただければ助かります。レイアウトはデザインと共に制作会社にお任せいただければ、お客さまにとっても効率的です。
また、写真やイラストについては、特殊なものや専門的なもの以外はこちらでご用意することもできます。お気軽にご相談ください。
ちなみにこれらの原稿を制作会社がいただくことを「入稿(にゅうこう)」といいますが、あまり、お客さまとの会話の中で使うことはありません。

2 デザイン・編集
入稿後、デザイン・レイアウトを行い、印刷用の原稿データを制作します。
制作された最初の原稿を「初稿(しょこう)」といいますが、これもお客さまには使わない場合が多いです。ちなみに最初の文字原稿も初稿といいます。修正するたびに第2稿、第3稿と数字を増やして呼びますが、これもお客さまにはあまり使わないです。
編集が終わると制作会社内部で校正を行います。これを「内校(うちこう)」といいます。
最近は校正用のPDFをメールなどでお送りすることが多いですが、少し前までは「校正刷(こうせいずり)」をお持ちするのが一般的でした。これは制作会社内のプリンタでカラー出力したものです。ゲラ(ゲラ刷り)ともいいます。

3 校正
校正用PDFや校正刷を確認し、文字の誤りや不備を指摘していただきます。この作業を「校正(こうせい)」と言いますが、これは比較的一般的な言葉でしょうか。
最初の校正または校正刷を特に「初校(しょこう)」、2度目の校正または校正刷りを「再校(さいこう)」と呼びます。ですが、実際には2度目を「2校(にこう)」、3度目を「3校(さんこう)」と回数に応じた呼び方を使う方が多いです。
基本的には赤文字で修正内容を記入の上、PDFまたは出力紙を制作会社に返信・返却いただきます。これを「校正戻し(こうせいもどし)」と言います(あまり使われていませんが・・・)。

4 修正
お客さまの立場で「校正戻し」と呼んでいたものを、制作会社側では「校正戻り」と呼ぶことがあります。戻しでも戻りでも同じものを指しています。
校正戻りに従って原稿データを修正します。修正が完了すると再び校正用PDFまたは校正刷をお届けし、校正をしていただきます。
概ね3校まで修正と校正を繰り返し、最終原稿へと仕上げていきます。

5 校了
もう修正する箇所がなくなったら、原稿の完成です。お客さまから印刷に回す許可を制作会社に出していただくのが一般的です。いわば原稿データの完成を宣言するようなもので、これを「校了(こうりょう)」といいます。
似たような言葉で「責了(せきりょう)」があります。
「責任校了(せきにんこうりょう)」の略で、修正箇所が少ない場合など、制作会社の責任において修正し、校了することをいいます。
「ここだけ修正して印刷に出して」というようなご依頼がこれにあたります。
また、校了にすべき段階において、念のためさらに校正すること(またはその校正刷)を「念校(ねんこう)」といいます。基本的には間違いを探すための校正ではなく、正しく修正されていることを確認するための作業(校正刷)と言えます。
修正回数を限定したサービスの場合、最終の校正を念校と呼ぶこともあります。例えば「修正2回目まで無料」というサービスでは、3校目を念校と呼ぶ場合があります。
責了の際、「一応、最終のPDFを送っておいて」という場合なども念校にあたります。

6 出稿
校了になった原稿データを印刷所に渡すことを「出稿(しゅっこう)」といいます。
昔の印刷方式の名残で「下版(げはん)」と呼ぶ人もいます。今では同じ意味とお考えいただいても大丈夫です(ややこしいですね 汗)。余談ですが、パソコンによるデータの作成と、データからの印刷が可能な今日では、下版という工程は不要になりました(活版印刷では今も必要な作業です)。
ここまでが制作会社の仕事で、出稿後は印刷会社での作業となります。
写真集や化粧品の広告のように、色の再現性が特に求められる案件では「色校(いろこう)」という校正が、印刷会社のオプションとして用意されています。印刷物の色を校正できるよう、本番印刷で使用する紙やインク、印刷機を用いた校正刷を出してくれます。様々なグレードがあり、値段も納期も様々です。ただし、料金(安価)または納期(スピード仕上)優先のご依頼によりオンデマンド印刷での対応になる場合、原則、色校はできません。色校が必要な場合はご依頼時にご相談ください。
原則、色校のご依頼がなければ、すぐに印刷工程に入ります。まずは出稿データ(印刷所の立場では「入稿データ」になります)を元に「版(はん)」が作られます。版はデータを反転したハンコのようなもので、フルカラーの場合はシアン、マゼンタ、イエロー、黒の4色それぞれの版、つまり4枚の版が作られます。もちろん、1色なら版は1つです。フルカラーでさらに金や銀などの特殊インクを使う場合はその数だけ版の数は増え、版の数だけ印刷コストは高くなります(ただしオンデマンド印刷では版は不要です)。
版が揃ったら、ようやく印刷です。インクが乾いたら、断裁し、製本など様々な加工が施され、印刷物が完成します。
ざっとこのような流れと用語で制作は進行します。
なにぶん専門用語の多い業界なので、制作会社の担当者は気づかないうちに専門用語を口にしていることがあります。当社スタッフも可能な限りわかりやすい言葉を使ってご説明するよう心がけておりますが、もしも制作に関するやり取りの中でわからない言葉が出てきましたら、遠慮なくご指摘ください。